今月の言葉 |

今月の言葉

 

『なにかお困りですか』。人通りの少ない道路で手押し車を押し、不安そうな表情を浮かべた高齢女性に、塾帰りの中学生が声をかけました。まだ寒さが厳しい冬の夜のことです。

 中学生は女性を祖父の家まで連れて行き、警察に連絡。心配する家族からは捜索依頼が出されていました。発見が遅れれば交通事故に遭ったり、転倒して負傷していたかもしれません。

 中学生は女性に声を掛けてから祖父の家まで一をキロほどの距離を、女性のペースに合わせ一時間ほどかけてゆっくり歩きました。会話を重ねるうちに女性の気持ちが落ち着いていくことが分かったそうです。

 認知症などにより、帰り道が分からなくなってしまう方は少なくありません。こうした方をできる限り早期に保護し、介護者の負担を軽減するため、位置情報を示す衛星利用測位システム(GPS)を活用する自治体が広がっているそうです。

 行方不明になる恐れのある方の靴やベルト、持ち物に小型の発信機をしのばせておく。いざという時、すぐに居場所を特定し、家族らが迎えにいく仕組みです。
 月1000円ほどで機械の貸し出しを行っている自治体もあるそうです。迷惑をかけたくないと周りに頼らず、身内の方だけで必死に捜すことも多いと聞きます。
効果が期待されますが、便利な機械だけでは人を助けることはできません。人に寄り添うこの中学生のような優しさがなによりも必要です。

GPSをはじめ、スマートフォンやAIと呼ばれる人口知能など、10年前には想像もしていなかった機械や技術が目まぐるしく発展している昨今。大変便利な世の中になる一方、その機械を扱う我々が、人としての思いやりや想像力、他人への寛容さを忘れずにいたいですね。

 今年もお互いに労り合いながら、許し合いながら穏やかに過ごして参りましょう。

大善寺 山田雅宣