『序』 清水組 実相寺 中村康祐

最も仲の良い青年僧より原稿依頼を受けた為、断りきれず、これも仏の導きと感謝し、浅学を省みずにこの欄の初めの筆をとる運びとなりました。

一週間の猶予を頂き、その間、日々の生活を見つめ直していると、知人の建築士から勧められた詩人長田弘(本年五月に逝去)の詩に目が止まりました。その中に『最初の質問』という問いかけが続く詩がありました。

「今日あなたは空を見上げましたか。」という問いに始まり、

「あなたは言葉を信じていますか。」という問いで終わっています。

言葉は、時空を超えて思いを伝えてくれる大切なものであります。されど、仏教の開祖・お釈迦さまが示された十悪(十の悪しきこと)の中に、口、言葉に関する項目が四つ挙げられ(ほかは身体が三つ、心が三つ)、注意を払わなければならないものでもあります。言葉は、時に誰かを傷つける『言刃』という刃物になる、「ペンは剣よりも強し」であります。

それでも、刃物が使い方次第で病いを切除する道具となりますように、言葉もまた、正しく用いることができたなら誰かを和ませ、支え、勇気づけ、安心を与えることができるものだと信じています。私はそんな言葉の持つ力を信じています。言葉には、相手を思う心が込められると信じています。

これから、ここに記されていく仏さまやお祖師さまの言葉が、青年僧の言葉を通して、現代を生きるあなたに届くことを願っています。人生の重き荷を背負って苦悩するあなたを軽くし、羽ばたかせる『言羽』となると信じています。

まだまだ熟していない、青青しい私達です。若さに任せて失礼なことを申し上げるかもしれませんが、どうかご叱咤ご激励を頂ければ、有り難く存じます。

合掌

清水組 実相寺 中村康祐

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